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浦島太郎

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むかしむかし、あるところに、とても心のやさしい浦島太郎という若ものがすんでいました。
魚つりが大すきで、毎日、朝日が顔を出すと、海へ行き、夕日が西の方にしずむころ、家にもどってきました。
そして、一日中、青い海をながめながら、「なんて広い海なのだろう。
海のむこうには、何があるのだろう。いつか遠い国へ行ってみたいなあ。」と思っていました。
そんなある日、いつものとおり、魚つり終えて、家に帰る途中のことです。
近所の子供たちが四、五人あつまって、小さなかめの子をつついたりたたいたりして遊んでいました。
それを見た浦島は、「そんならんぼうなことをしてはかわいそうだ。早くにがしてやりなさい。」と言い聞かせましたが、子供たちは、まったく聞こうとしません。
そこで、浦島は、「よしよし、それなら、わたしにそのかめを売っておくれ。」とお金をふところから出して、子供たちにあげました
そして、かめをもらうと、海へつれて行き、「もう人間のすむ浜辺なんかに来ちゃだめだよ。」と言い聞だせて、にがしてやりました。
それから二、三日して、またいつもようにの上にこしをかけ、広い大きな海を見ながら、つりをしていると、どこからか、「浦島さん、浦島さん。」とよぶこえが聞こえてきました。
浦島は、一体、だれが自分の名前をよぶのだろうと回りを見わたすと、大きな海がめが、ひょっこりと顔を出しました。
そして、「浦島さん、わたくしは、きのういのち助けていただいたかめ母親です。
今日は、そのお礼に海の中にある竜宮城へおつれしようとおむかえにまいりました。
どうぞ、わたくしの背中におのりください。」と言いました。
遠い国へ行ってみたいといつも思っていた浦島は、それを聞くて、大喜びで、大きなかめの背中にとびのりました。
かめが、林のように立ちならぶ、いろいろな海草の中をすいすいと泳ぐて、たちまち海の底の竜宮城につきさした。
竜宮城は、赤や黄色でかがやく美しいごてんで、浦島太郎は、目をまるくして見わたしました
門からは浦島が助けてあげた子がめをはじめ、美しいおとひめさま、そして、平目のお魚たちが、立ちさならんでむかえに出ています。
「ようこそいらしてくださいました。
先日は、子がめのいのち助けてくがさり、本当にありがとうございました。
今日は、竜宮城にすむわたくしたちみんなで、ぜひともお礼をしたいと思います。
どうか、ゆっくりしていってください。」
おとひめさまあいさつして、浦島太郎を竜宮城の中に、あんないしました。
そして、今まで一度も食べたこともないおいしい料理を食べたり、見たことも聞いたこともない、魚たちの音楽おどりを見せてもらって、浦島太郎は、本当に楽しい一時をすごしました。
ところが、こんな楽しい日も三日続くと、浦島は、だんだん自分のふる里こいしくなってきました。
そして、とても親切にしてくれたおとひめさまや魚たちにわかれをつげ、竜宮城おいとますることにしました。
おとひめさまは、浦島に、竜宮城思い出として、おみやげに、きれいな玉手をくださいました。
そして、この玉手ぜったいお開けにならないようにと、浦島に言いました。
浦島太郎はを深く下げて、お礼をいうと、またかめの背中にのって、地上もどってきました。
すると、さあどうでしょう。
自分の家がどうしてもみつかりません
行き来する人たちもさっぱり見おぼえがありません。
「これは、一体どうしたことなのだろう。竜宮城には、三日しかいなかったはずなのに・・・。」
そう思って、浦島はたずねてみることにしました。
「もしもし、この辺に浦島太郎の家があったはずなのですが、ごぞん知ありませんか。」
「さあ、浦島太郎ですか。そうですね。
ああ、そういえば、むかしむかし、なんだか、大きなかめの背中にのって、海の中に行ったと聞きましたが。
その後、どうなってしまったか、分からないとおじいさんが話してくれたことがありましたよ。」
この答えを聞いた浦島太郎は、がっかりしてしまい、歩く力もなく、へとへとと地面の上にすわりこんでしまいました。
どうしてよいのか分からなくなった浦島は、おとひめさまからいただいた玉手を開けてみることにしました。
そのふたを開けて、浦島は、びっくり仰天
中からまっ白いけむりが出てきたかと思うと、浦島は、まっ白なしらがのおじいさんになってしまいました。
竜宮城では、たったの三日だけだったのに、地上では、何百年もの年がたっていたのでした。
西洋にリップバンウィンクルというお話がありますが、それにとてもよくにた、日本のむかしの話です。