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つるの恩返し

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むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
夕日がだんだん西に沈み
赤い夕焼けも、だんだんあせて、一番星が見えるころです。
おじいさんが一日の畑仕事を終えて、そろそろ家に帰ろうと、あぜ道に腰をおろすと、
バタバタと鳥の羽音が聞こえました。
音のする方を見てみると、一羽つるが、わなかかってもがいていました。
心の優しいおじいさんは、そのつるを見ると、本当にかわいそうになり、急いでわな外して逃がしてやりました。
それからしばらくした、寒い冬のある日、
おじいさんとおばあさんがこたつで外の雪をながめながら、お茶を飲んでいると、
トントンとだれかが戸をたたくのです。
おじいさんが戸を開けてみると、きれいな女の人が雪の中に立っていました。
大雪で、この宿もなく、旅ができなくて困っています。
どうか一晩とめてもらえませんでしょうか。」と、その女の人は、たのみました。
おじいさんとおばあさんは、喜んで承知し
お風呂をたき、きがえを用意してあげたりして、めんどうを見てあげました。
次の日、おじいさんとおばあさんが起きてびっくり。
この女の人がさっさと、こたつに火を入れて、朝御飯を準備しているのです。
「お客さんに働かせては・・・」と、おじいさんが引き止めようとすると、
女の人は、「昨晩宿をお借りしたお礼に。」と言って、働くのをやめません。
その日、一日中、雪がしんしんとふり続きました。
そこで、女の人はしかたなく、もう一晩とめてもらうことにしました。
しかし、次の日も次の日も、その次の日も、雪は、いっこうにやみそうにありません。
おじいさんとおばあさんに引き止められて、
この女の人は、しばらくいっしょに住み、お手伝いをすることにしました。
外の雪もすっかりとけて草木が新しいを出し始めた、ある日のことです。
この女の人がおじいさんとおばあさんに、「機を織らせてください。」とたのみました。
おじいさんとおばあさんが、「お前がしたいことは何でもおやり。」と承知すると、女の人は、「もう一つお願いがあります。
私が機を織っているところを、どんなことがあっても見ないと、約束してください。」とたのみました。
そうして、ひとり、部屋の中にこもって、機を織り始めました。
一日、二日、三日…一週間とたちました。
けれでも、その女の人は、部屋にこもったまま、機織りをやめません。
おじいさんとおばあさんは、だんだん心配になりました。
しかし、約束を破るわけにはいきません。
「何を作っているのか分からんが、どんなでもまさか一週間はかかるまい
病気にでもなっていたら・・・」と言って、中の様子うかがうことにしました。
しょうじをそっとあけて、中をのぞいて、おじいさんとおばあさんは、びっくり仰天。
部屋の中では、一羽つるが、自分の羽を一本ずつとりながら、機を織っているではありませんか。
「おじいさん、おばあさん、私は、おじいさんに命を助けられたつるです。
この御恩をお返しに、この反物を織りに来たのです。
これは、つるの千羽織りと言って、とてもめずらしいものです。
これからお二人で楽に暮らしていけるお金になるはずです。
私の本当の姿を見られたので、お別れしなくてはなりません。いつまでもお元気で。」
と言って、反物手渡すと、空に向かって飛んでいってしまいました。
これは、「つる恩返し」という話です。
日本人なら小さいころ一度は、必ず聞いたことのある話です。
そして、恩知らずは、鳥やけものにも劣ると言って、
恩を受けた人々に恩を返す大切さを教えられます。
父母の恩は、海よりも深く、山よりも高い。」
などという言葉は、むかしの寺子屋の時代の言葉として、
日本人は忘れてしまったと言う人がいるかもしれませんが、
このむかし話に見られるような恩を忘れてはいけないという考えは、
今でも日本人の心の中に深く残っているのです。