Instructions: Use the button to listen to a sentence. Use the button to show a translation.

文明開化

Listen to Whole Story

徳川幕府倒れて明治時代になり政治天皇の手に移ると、いろいろな新しいことが始まりました。
まず、今まで全国に分けて治めていましたが、その廃止され、代わって県が置かれました。
これを廃藩置県と言いますが、現在のような県の名前がこの時、付けられました。
そして、領土はすべて天皇のものとし、国の役人がそれを治めるようになりました。
また、それまで士農工商といって、はっきり身分区別されていたのを、四民平等としました。
その結果農民町人武士同じように名字を持つようになり、職業も、自分が好きなものを選んでもよいようになりました。
そしてそれまでは、武士けがちょんまげを結っていて農民町人別でしたが、明治になると、そのちょんまげを切り落としの人々と全く同等になりました。
この武士のちょんまげを切った頭をザンギリ頭と言いますが、「ザンギリ頭たたいてみれば文明開化の音がする」などというおもしろい歌まで作られました。
このように、文明開化とは、明治時代新しい文明のものと入れ替わって急速に日本に入って来たことを言います。
例えば、1872年9月12日、日本で初めて鉄道東京新橋横浜の間に開通しました。
今まで馬車とか人の運ぶかごなどしか見たことのなかった人々は、黒い大きな汽車が煙を出して走るのを見て、とてもめずらしがりました。
あるで、湯気を出して止まっている蒸気機関車を見た男が、「馬でもこんなに湯気が出ていたら、熱くてかわいそうだ」と言って、蒸気機関車の上から水をぶっかけたそうです。
また、東京中に電信柱が立ち始め、空に落書きをするように電線があちらこちらに引かれるようになりました。
電線を通る電信を使って、どんな遠い所にでもすぐにメッセージが伝えられるようになりました。
あるおばあさんが、電信柱よじ登ってふろしき包み電線結びつけようとしていました。
何をしているのかと聞かれると、「遠い町にいる息子にこれを送ってやりたいんです。」と答えたそうです。
何だか笑い話のようですが、このような新しい文明文化急速に入って来て、人々もそれに慣れるのに一苦労したのではないかと思います。
文明開化への戸惑い物質的な面だけでなく精神的あるいは思想的な面にも反映されていると思います。
「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず。」と言った有名福沢諭吉が、ある時、馬に乗ろうとしていると、召使いが出て来て自分の主人を助けようとしました。
ザンギリ頭をした諭吉は、「もう今は四民平等だから、そのように私に仕え必要はない。」と言いましたが、いくら言い聞かせても聞きません。
ついに諭吉は、「私にそのようにして仕えるのをやめなければ、お前を切り捨てるぞ。」とおどかさなければならなかったと言われています。
ザンギリ頭たたいてみれば文明開化の音がする」とは、の人はうまく言ったものだと思います。
新しい文明文化思想一生懸命慣れようとしているその東京の町の姿が、目に浮かぶようです。