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平家物語

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祇園精舎の声、諸行無常響きあり
沙羅双樹の花の色、盛者必衰あらはす
おごれる人も久しからず、ただ春の夜ののごとし
たけき者遂に滅びぬ偏に風の前の同じ
この有名冒頭のことばで始まる「平家物語」は、日本人の人生に対する無常観如実に表している。
祇園精舎というのは仏陀が法をいたインドの寺の名で、その寺から響き渡るの音に耳を傾けると、この世の中の諸々のこと、つまり、すべての人間行い営みはあのの音が長続きしないように、すぐ消えてなくなるはかないものだと聞こえてくる。
また、仏陀亡くなる時、その四方にあった花が、一度白色変わって仏陀おおったという沙羅双樹の、その美しい花の色を見ていても、花の盛りも短くてすぐに散っていってしまうということが一目瞭然にわかる。
全く同じように、人間世界勢力というのも一時的なのもので必ず衰えていくし、権力頼り威張り散らす傲慢なおごれる人も、ずっと威張っていられるわけではない。
ちょうど今、見たと思ったがすぐ次のに変わってしまう、春の夜の全く変わりがない。
力の強い猛烈な者もやっぱり遂に滅びていく。
これは、まるで風の前のちりと全く同じ、つまり、人生は無常であるということを意味している。
平家物語」は、このことばを物語の始めとして、以下、栄華極めた平家一門が、東国から攻め上ってきた源氏軍勢に次々に敗れ去る没落歴史繰り広げるのだが、全章通じて、この冒頭のことばが基調になっており、当時の人の無常観一貫しているのである。