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写真

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ある醜い―――と言っては失礼だが、彼はこの醜さのゆえに詩人になんぞなったのにちがいない
その詩人が私に言った。
僕は写真嫌いでね、めったに写そうとは思わない。
四五年前に恋人婚約記念に取ったきりだ。
僕には大切恋人なんだ。
だって一生のうちにもう一度そんな女ができるという自信はないからね。
今ではその写真が僕の一つ美しい思い出なんだよ。
ところが去年、ある雑誌が僕の写真を出したいと言って来た。
恋人とその姉と三人で写した写真から僕だけを切り抜いて雑誌社に送った。
最近また、ある新聞が僕の写真をもらいに来た。
僕はちょっと考えたんだよ、しかしとうとう恋人とふたりで写したのを半分に切って記者に渡した。
必ず返してくれるように念を押しておいたんだが、どうも返してくれないらしい。
まあ、それはいいさ。
それはいいとしても、しかしだね、半分写真恋人ひとりになった写真を見て僕は実に意外だった。
これがあの娘か。
―――ことわっておくが、その写真恋人はほんとうに、かわいくって、美しいんだよ。
だって彼女はその時十七なんだ。
そして恋をしている
ところがだ、僕と切り離されて僕の手に残った彼女ひとりの写真見ると、なあんだ、こんなつまらない娘だったのかという気がした。
今の今まであんなに美しく見えていた写真がだよ。
―――永年の夢が一時にしらじらと覚めてしまった。
僕の大切宝物がこわれてしまったんだ。
してみると、―――と、詩人一段と声を落とした。
新聞に出た僕の写真を見れば、やはり彼女もきっと思うだろう。
たとえ一時でも、こんな男に恋をした自分自分口惜しい、とね。
―――これで、みんなおしまいだ。
しかし若し、と僕は考える。
ふたりで写した写真そのまま、ふたりが並んで新聞にだしたとしたら、彼女はどこからか僕のところに飛んで帰って来やしないだろうか。
ああ、あの人はこんなに―――と、言いながら